胡蝶の夢

24時間バスに揺られていた。
真夜中、揺られながらの微睡みのなか、あぁ、明日はレンタルしている
DVDを返しにいかなきゃなって考えていた。


日本で住んでいた、日が全く差さない部屋で眠っている自分と、パキスタン
北部でバスに揺られながら眠っている自分が重なった。
この夢から醒めたら、一体自分はどちら側に居るのか。


目が覚めたら、自分は旅行に出ており、パキスタンに居た。
社会人生活をしている時は、やたらと物語を求めていた。
毎週末、5本借りると1000円になるレンタルショップで映画のDVDを借り、
一週間で必ず消化をするようにしていた。
往復3時間かかる電車通勤を利用して、二日で一冊の小説を読むようになっていた。


不幸な人間は物語を求めるという。
社会人生活を振り返る、だが、それほど不幸だったとは思えない。


今は旅行に出ている。希求した物語のただ中にいる。
だが、それほど幸せは感じない。


自分自身の中で当然それは、地続きであり、共通の地平の上にある。
よって平板な感情しか持ち上がってこない。


徒然。