トレッキング

滞在している宿から見える谷向こう、スマヤル村の奥に見える真っ白な雪が
積もる場所まで行く事にした。

谷を越えるには中国がKKH(カラ・コルム・ハイウェイ)のみならず、
隣接する国々で造り続けている『友好橋』を通る事となる。
もう一度、小さな吊り橋を越えて、スマヤル村の麓に着く。
そこから道がなくなる。
猫の額程でかつ背丈程の高低差のある段々畑のあぜ道を平均台のように
バランスを取りながら移動し、壁にはりついて段を登る。
子供以来使っていなかった筋肉を多用して登りきった。


谷の切れ込みをみつけ、そこからひたすら上り坂。
足下を見ながら登っていると、地面にキラキラ光る物が点在している。
そういえば、アルティットフォートを観光した時、窓に嵌るアクリル板のような
材質を指し近辺の山中で採れるマイカだと言っていた。
天然のものでも、結構な大きさがある。

雲母。
雲の母、うまいこというもんだ。


谷向こうから見た際は気が付かなかったが、襞のように重なる脊梁に隠れて
村が存在した。
突然平地に出て、そこにはアーモンドや杏、桃の樹がつける薄紅色で満たされ
る集落が有った。
桃源郷のイメージが具現化した。


そして登る事4時間、やっと雪のある場所に到着。
無謀にも雪を目指して、敢えて水を持たずに来た。
持ち合わせていた干しぶどうを雪に載せ、一緒にもさぼった。

冷たく甘い水が咽を通って落ちていく。
最高に美味い。


下りは3時間半、宿に到着したらあたりは暗くなっていた。


上り坂ではしっかり、ゆっくりと登り、下り坂ではリズムよく下る。
そして垂直に近い勾配では張り付き、そろそろと昇り、そろそろと降りる。
久しぶりに身体の動きを意識した一日、そして疲れた。